National Institute of Genetics 国立遺伝学研究所 木村暁研究室

細胞の分裂と個体発生の力学的理解をめざして
"場"を読み、自らを建築する細胞

我々の身体は細胞があつまってできている。この細胞は生命の最小単位といえる。たった一つの細胞でも自立的に生きることができるが、細胞より小さい階層で生きているものはない。細胞は蛋白質などの化学物質の集まりだが、単なる寄せ集めでは生きた細胞にはならない。細胞内の化学物質が適材適所に配置されることによって、そしてそれが適切に動くことによって、細胞は生きることができる。ちょうど部品が機材適所に組み合わされて住み心地のよい家が出来たり、人やモノが動いて生き生きとした街ができるように。細胞は、ミクロな分子が空間的に配置され、時間的にダイナミックに動くことによって機能する、生きた建築物なのである。


細胞分裂の力学モデルの構築
どのようにミクロな分子から細胞が建築されるのだろうか?細胞の建築には設計図も現場監督もいないにも関わらず。。。我々はこの秘密を探るために、細胞内での分子の働きから、細胞内での空間配置やそのダイナミックな変化を説明できるか、についてコンピュータシミュレーションを用いて解析している。1つの細胞が分裂して2つの細胞が生じる、細胞分裂の過程に注目している。これまでに、核が細胞の中央に配置し、遺伝情報を司る染色体が2つに分配され、細胞質が二つに分かれる過程、についてシミュレーション上での再現に成功し、その分子的な基盤について解析を進めている。


細胞内構造物のサイズを制御するしくみ
細胞は、その姿を多様に変化させて私たちの身体の中で機能している。突起をもつ神経細胞、大きな卵細胞などなど。大きさや形が変わっても、細胞分裂などの基本的な機能を遂行するには、細胞内の構造体が細胞の大きさや、他の細胞内の構造体の大きさにあわせて、自分の大きさや形を調整するという、「場を読む」能力が備わっていると考えられる。我々は、「細胞や細胞内構造物の大きさといった物理的なパラメータが、細胞内の構造にどのような影響を与えるか」という問題について、これらの大きさが劇的に変化する初期胚発生過程を対象に研究している。